私たちが品質に責任を持って、米を育てられる範囲は広くて永平寺町内であろう。 「目が届く、手が届く、心が届く」の信条の元、 私たちは酒蔵から直径10km以内の地元でお米を栽培しています。 地形や土壌を把握し、田んぼ毎の特徴を知る。 毎年、1年をかけて米作り・酒造りを自分たちで繰り返す。 より良い米を目指して。 200年、この地で暮らし、お酒を醸してきた私たちだからこそ表現できる米の魅力があると考えています。
STEP01
苗作り
STEP02
荒起こし・荒かき・植代
STEP03
田植え
STEP04
水管理・草刈り
STEP05
作見
STEP06
溝切り
STEP07
出穂
STEP08
稲刈り
STEP09
籾摺り・乾燥
STEP01
苗づくりは、塩水に入れても沈むほどしっかり実が詰まった種もみだけを選別する「塩水選」から始まります。優良な種もみのみを苗箱に撒き、遮光され、30度に保たれた発芽器に並べます。
2~3日後、苗の赤ちゃんが白く柔らかな顔を出したら、ビニルハウスに移動します。ここから苗の成長は早く、1日で約1cmずつ伸び、色も鮮やかな緑へと変化を遂げます。若々しい緑色の苗が並ぶビニルハウスは圧巻です。
STEP02
苗づくりと並行して、4月中旬より荒起こし・荒かき・植代の3段階で田んぼを均平にしていきます。
昨年の稲わらが残っているので、まず「荒起こし」で田んぼを起こし、その後水を入れ「荒かき」を行います。
植代は田植えの直前に行い田んぼを均平に整えることで、田植えがしやすくなります。
また、3回田んぼに手を入れることで草の繁殖を抑えることにもつながります。
STEP03
永平寺町内で自社栽培している田んぼは約100枚。山田錦15町歩、五百万石5町歩の合計20町歩です(1町歩=約10,000㎡)。しっかり根が張り背丈が12cm程に伸びた苗を田植え機にセットして、いざ出発です。
部門を超えて社員・蔵人総出で行います。山田錦は晩稲の品種ですが、北陸地方の気象状況を鑑み、総日照時間確保のために試行錯誤の上、最近では5月中旬から植えるようになりました。
STEP04
成長に合わせて田んぼの水の量を調整することで、苗の活着、健全な分けつの促進、強い根の育成、病害虫防除などを実現します。
また、暑い日は、水口から水を入れ尻水戸を開放することで、なるべく水が冷たく保たれるように、また、嵐の日は水をたくさん入れ、水面を高くすることで苗が倒れるのを防ぐなどのコントロールもしています。そして、吉田酒造では「良い米は美しい田んぼから」を合言葉に各田んぼで月に1回は草刈りを実施しています。
STEP05
「稲は人の足音を聞いて育つ」と言われています。足しげく田んぼに通ってお世話をすれば、稲も応えてくれます。毎日の水管理に加え、2週間に1回農事部門で、月に1回製造部門、契約農家の方々も交えて、稲の生育調査・意見交換会を実施しています。
作見では、茎数、葉色、背丈などの項目を計測し、田んぼの状態、葉の状態を確認しデータ化していきます。また、定期的に外部から先生を招き、契約農家の方々と一緒に酒米栽培の勉強会を行い地域全体で品質の均一化、底上げに取組んでいます。
STEP06
稲が青々と茂り背丈が50cmくらいまで育った7月中旬頃、排水をスムーズにするため「溝切り」という作業を行います。溝切りとは自転車に似た専用機にまたがり田んぼを走ることで溝を作り、尻水戸に水の流れを繋げる作業です。
溝切りには主に2つの効果があり、第一に排水しやすくすることで秋の収穫時のコンバイン作業を容易にします。第二に土中のメタンガスなど有害ガスを抜くことで、根の養分吸収を促進させます。
STEP07
8月末から9月上旬にかけて、稲穂の赤ちゃんが茎から顔を出す、「出穂」が観察されます。この時点で、薄緑の柔らかいもみ殻の中には、まだ実はなく瑞々しく柔らかいです。この後、白い花が咲き、受粉をしてだんだんとお米が形成されます。白い花は、約1週間の期間限定で午前9時~午後2時頃までしか咲かないので、一面に白い花が咲き若い稲穂が風に揺れている様子は貴重で神秘的です。
また、出穂後2週間は光合成をして穂に養分を送るため、天候が良いことが重要です。
STEP08
10月の中旬、出穂後の積算温度が1,000℃を迎える頃が刈り時となります。この時期は台風などの影響もあるので、刈るタイミングを見極めるのが非常に難しいのですが、少し青いくらいで収穫した方が全体の米の状態が良いとされています。
登熟した山田錦は特に米粒が地面に落ちやすいので、刈り遅れになると収量がぐんと減ってしまいます。
また、コンバインが田んぼに入りやすいよう、田んぼを乾かしコンディションを整えることも重要な仕事です。
STEP09
最後の工程で、もみ殻を取り除き、お米を選別し、乾燥させていきます。山田錦で等級をもらえる粒の大きさは22mm以上です。選別で粒の大きさ、色が条件に満たないものはここではじきます。酒造りの工程で米が割れるのを防ぐため乾燥にもこだわり、初めは米中の水分ムラを考慮して風を通します。
次に、通常50℃で乾燥させるところを40℃以下の熱風でゆっくり丁寧に乾燥させます。こうしてできた米は杜氏へと渡され琥珀色の雫へと姿を変えるのです。